竹の生態にあわせた植栽のポイント
竹は木と違い独特な性質を持っています。
木は毎年成長しつづけ何十年も生きます。
竹はどうでしょうか?
筍を発生させ増えていき、その筍は3ヶ月程度で生長を終え竹になり、その1個体は10年程度で枯れてしまいます。
植栽時にはそんな竹の特徴を良く理解し、計画を立てるべきであり、その後の管理を適切に行う必要があります。
その生態に合わせた計画から植栽、管理までのポイントをまとめました。
竹林管理としても参考になると思います。
また、ご興味、ご相談のある方は気兼ねなくご連絡ください。
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1. 植栽前の計画
環境に合わせた品種の選定
竹は、品種によりそれぞれの大きさや特徴が異なります。植栽計画、設計時にはそれらを見極めた上で植栽される環境や立地に合わせた事前の品種選定が大切です。下表に国内で扱われる主だった品種とその特徴をまとめました。
・景観・立地に見合った大きさ
→大型になる品種の中にも小さな個体はあり、それを植えてもその個体は生長しませんが、筍による更新によりその最大高さまでの物が発生してきます。植栽数年後にどのくらいの高さの竹林になって欲しいか(なっては困るか)を考慮します。
・植栽地の面積・土厚の要求度
→基本的に大きな品種ほどより広い場所(土の容積)を求めます。幅・奥行きのない植栽地、土厚の取れない屋上緑化、プランターなど狭い場所でも生息のできる品種を検討します。大型種で1m程度、小型種でも最低50cm程度の土厚が必要です。(鉢植えですと根がルーフィングをおこし更新がはかれないため1世代、数年で枯れてしまいます)
・植栽に向かない環境への耐性
→ビルの谷間など日当たりの悪い場所や、逆に屋上など日当たり・風当たりが強く乾燥する場所に良く耐える品種を検討します。室内緑化でも光量が足りればすぐに枯れはしません。しかし、気温の変化がないところでは休眠・栄養蓄積ができずに発筍が無くなり、更新がはかれないため、数年ですべてが枯れてしまいます。※ よって、定期的な植え替えが必要となります。(通常の竹で4,000lux 耐陰性のある品種で2,500lux確保できれば数年の維持は可能といわれています)
・機能性を活かす
→昔から農家の裏には防風林として竹が植えられていました。風だけではなく「目線を遮りたい」、「2Fから隣地を見えなくしたい」など目隠しにも向きます。どの高さに枝葉があれば適正なのかを考慮します。また、竹は他樹木に比べてより多く根から水を吸い上げそれを葉から蒸散し湿度を保つことと、竹林という群落を形成し他樹木に比べより広範囲にわたり木陰をもたらすことから、都市部におけるヒートアイランド現象の緩和に最適といえます。さらに、手入れのされた竹林の青々しい若い竹は、含水率が高く燃えにくいことから山火事を止めた事例が沢山みられます。都市部の防災上も機能するかもしれません。
※東アジアだけではなく東南アジア、アフリカ、南米と世界中の多くに分布している竹類ですが、日本にある地下茎で広がり林になるタイプの竹は、東アジアを中心に温帯にのみ生息しています。国内でも東北以北の凍土になる寒冷地や、九州以南の年間を通して温暖で冬の寒さがない環境では生育(更新)できません。北海道にも生育している笹類も竹の仲間ですが、多くが小型で葉が大きく筍の皮がついたまま一生を過ごすなどと特徴が異なり、また、沖縄を始め熱帯にある竹類の多くは地下茎がなく竹林を形成せずに株立ち状に小さな固まりで生育します。
植え付け本数と適期
・植栽地の奥行きがある場所には、大型種で1㎡当たり1本、小型種で2本程度、奥行きがなく列植する場合は、1m当たり2~4本程度で千鳥(互い違い)に植えるとよいでしょう。あまり少ないと風当たり、日当たりによる傷みが出やすく発筍に時間を要します。逆にあまり多いと中枝が枯れ上がったり、病虫害の発生原因となったりします。
・植栽適期は常緑樹の扱いに準じ、水揚げがあり活発な生育が見られる3月中旬から11月中旬までとなります。ただし、夏の酷暑期は根の生育こそ活発ですが暑さで植え傷みが出やすく、発筍期は栄養が奪われ共倒れになる事があります。特に適期外の冬期は何をしても枯れます。工期などの都合もあるでしょうが可能な限り避けることをおすすめします。
2. 植栽時の注意事項
土壌条件と施肥
・竹の分布は広く、黒ぼく土など火山灰土から粘土質の赤土などの堆積土、磯混じりの真砂土など砂壌土のような所までどんな土質でも生育は良いです。しかしながら、水はけが悪く水の溜まるところでは根が腐り生育できません。また、都心部など狭く環境の優れない場所では、水持ち良く、かつ、排水性に優れた壌土を選ぶべきです。phは酸性を好みます。
・昨今では構造上の問題から軽量な人工土壌を使用する事が増えていますが、締まりが悪く揺すられ根が張れない点と、有機物の還元が少なく、かつ、養分の保持が悪く灌水で流亡してしまう点から注意が必要です。竹と相性が悪いわけではありませんが、支柱などで保持を行うことと定期的に即効性の液肥を施すなどの対策が必要でしょう。
・植栽後早い段階で発筍を期待したいため堆肥や肥料(園芸、林業用など)を植栽時に元肥として施すことが望まれます。特にイネ科である竹はケイ酸の要求度が高く施すと稈が丈夫になり色も上がります。これを多く含む真珠岩系パーライトは相性が良いです。土壌改良として水はけ、締め固まりの改善にも効果があります。
・竹の落葉は春5~6月頃行われます。すべての葉が入れ替わり葉が薄く軽いため飛散し掃除が面倒ですが、竹葉にはケイ酸分を多く含むので竹にとってこれほど効果的な肥料はないといえます。掃き捨てるのではなく地被植物などで飛散を防止し、自然循環により土へ還元させるのが理想です。また、これは水分蒸散の抑制にも効果があります。
根止めの必要性
・竹は、土中で地下茎という根を張り巡らせ、筍を生み広がって行きます。都心部のコンクリートで囲われた植栽地では抜くことはないので問題ないですが、地つながりのお庭など植栽地では、あちこちに伸び広がらないようコントロールが必要です。特にアスファルト舗装には注意が必要です。見切りにある縁石は構造が浅く下から越してしまい、曲げに弱いアスファルトは持ち上げられて割れてしまいます。
・素材としては波板や通常のゴムシートでは劣化し、破れてしまう事があるため、長期にわたり強度を保つ物が必要です。コンクリートの擁壁は理想ですが工期と経費がかさみます。弊社では耐候性に優れ劣化がみられずダムなどの防水に長年使用実績があり、かつ、突き抜け、裂削に強く表面がなめらかな(伸びている地下茎の先端は、平滑面にぶつかると滑り向きを変えます)ポリプロピレン系硬質ゴムシートをすすめています。竹の品種により異なりますが土中の側面40〜100cmほどの深さまで敷設する必要があります。(底面には必要ありません)
参考商品 : 三菱樹脂(株)メタプレーンシート(t1.5mm) / デュポン社RCR®防竹シート(t0.69mm)
硬質ゴムシートで根止め
水極めと支柱
・竹は水分要求量が高く、土中に空隙があると乾燥の原因となるため、植栽時にはしっかりと水極めして根本を締め固め、雨水が溜まるよう水鉢を作る事が肝心です。また、植栽後数ヶ月は灌水を必要とします。活着後も特に土の容積の少ない場所や水持ちの悪い土壌では乾燥しやすいために定期的な灌水が必要となり、可能ならば人工灌水システムを設ける事をすすめます。
・竹林の土中では互いに地下茎で繋がり合い、養分の行き来をして生息していますが、苗木として単体に切り取られると1個体の支持根は少なく、かつ、上部が重く、バランスが悪いです。そのため植栽当初は、風により揺すられないように支柱を掛ける必要があります。通常は竹布掛け支柱を用います。また、風当たりの強い場所では、複数段施したり、井桁状に組んだりと竹同士でしっかり持たせると良いでしょう。数年後、十分な発筍が見られ、当初植えた物が間引けるようになれば、地下茎でつながっているのでもう支柱の必要は無くなります。
井桁に組んだ支柱
3. 植栽後の管理
植栽初期
竹林から掘り出され違う環境に植えられた竹は、日当たり・風当たり具合が変わり、一夏を過ぎる頃には稈の色が褪せてきて植え傷みが目立ってきます。しかし、地下部では旺盛に地下径(根)を伸ばし、新しい竹(筍)を生やす準備をしています。よく、「見た目が悪くなったので植え替えたい」という相談を受けますが、これは、せっかく伸び広がった地下茎(根)を切り痛めてしまい数年間手戻りする事になりますのでおすすめしません。
それよりも、定期的な灌水と施肥により、1年でも早くその場から竹(筍)を生やすことに注力すべきです。大型の品種では2〜3年、小型のものであれば一夏を越した翌春には出始めます。最初は小さな物しか見られませんが、年々大きな物が出始め、5年を目途にその場から発生した竹に入れ替えられれば大成功と言えます。また、その本数が増えてくると密度が上がり竹どうしで木陰を作り自身を守りあい、日焼けや風当たりによる傷みは少なくなってきます。
竹植栽で肝心なのは、1個体を後生大事に育てるのではなく、一方、発生した筍を「増えては困る」といって全て倒してしまうのでもなく、その場から適度に筍を生やし竹に成長させ、更新(入れ替えていく)させていくことに尽きます。こうして永続的な緑地を形成していきます。
間伐・更新の重要性
その後、だんだん本数を増やし混み合ってきて、そのままにすると藪の呈を成します。これは景観上も防災上も芳しくありません。また、そもそも竹は美観を保ち、筍を生む親としての機能ははせいぜい5~6年程度で、その後10年もすると立ち枯れてしまいます。
よって、その場から竹(筍)を生やし、古くなった物から間引きをしていく間伐・更新が重要になります。その本数は設計当初の意図にもよりますが、奥行きのある植栽地では、風通し良く新しい個体ができるだけ均等に生えているのが理想です。狭い植栽地では減らしすぎないよう見苦しくない程度に多めに残す用にします。
竹林の整備としては、竹材林か筍林としての利用目的により多少変わりますが、昔の方曰く「番傘をさして歩けるようにせい」ということです。これはすべての竹の葉に日の光が当たる程度です。植木のような特殊な剪定作業は必要なく、見た目に古くなった物を地際から切るだけでよく、わかりやすくイメージするためによく小学校に例えます。1年生として筍が入学してきて竹に育ち、2年、3年・・・生と各学年同じ数だけ在学していて、6年生になったらそろそろ卒業です。立ち枯れる前に地際から間引いていきます。時期としては地下茎への栄養蓄積が終わり活動が休眠する冬期に行います。(竹材利用する場合も竹材内の養分・水分の含有量が少ない冬期に行います)
また、発筍が充分に見られれば不要な(多すぎる)物を筍の内に間引くことで発生材の処理量が減り作業を軽減できます。しかもそれらは我々の舌を楽しませてくれたりもします。
病中害防除
竹につく病虫害はさほど多くありません。日当たりが良く、風の抜けが良い活力ある健全な竹林であれば病虫害の大発生など滅多におこらない物ですが、都心部の狭く環境の優れない場所ではたまに見かけます。病虫害対策に大切なのは、まずは間伐更新と施肥により活力ある竹林形成を促す事であり、発生させないことに注力するべきです。
しかしながら、万が一発生した場合は、発生初期に迅速に対応することが肝心となります。ただし、予防をかねて定期的に行うことはかえって悪く、他の天敵生物まで減らしてしまう可能性があり、自然のバランスを崩し大発生の原因となりかねないためお勧めしません。
下に主だった物とその対策を記しておきます。
タケホソクロバ・セスジノメイガ(ハマキムシ)・タケアツバ → 有機リン系(DEP・MEP・マラソン・オルトラン等)
ワタカイガラムシ・アブラムシ類 → カルホス乳剤(越冬期間中については、マシン油乳剤・石灰硫黄合剤)
ハダニ類 → オサダン水和剤
さび病・すす病 → 有機硫黄剤(ダイセン・マンネブダイセン)
おわりに
竹は植物ですのでメンテナンスフリーというわけにはいきません。ましてや我々人間が生活圏の中で共存していくためには定期的な管理が必須です。本来自然環境下では資源はその場で循環し、これだけで十分生育が可能ですが、枯れて倒れ土に還元されるのには数年の時間がかかり我々には待ちきれませんし、多くの有機物は持ち出されてしまい循環は期待できません。ですので少しだけ手助けえをする必要が生じます。
また、近年ではプラスチックなどの石油製品に替わられ竹材の利用は減り、さらに野焼きが禁止されたことにより発生材の処分に費用がかかることが負担となり全国にある竹林は放置され問題視されていますが、一方、現在では持続可能な社会を目指す中、竹は資源化が早く持続可能で未利用な有機物資源として世界中から脚光を浴び始めています。建築や工業利用がメインですが、モダンな家具やアクセサリーなどや、昔ながらの風習として七夕、流しそうめんに門松などと、筍という食も含め身近なところでも様々に生活を彩ります。
このように日々の暮らしの中で適度に利用されながら、また、都市部の近代空間や住居の緑化へと身近に人と共存していくことが竹にとっては理想の形だと思います。是非、竹植栽を竹の新たな居場所として、日常生活の中で楽しんでいただければ幸いです。